ISBN:4309015700 単行本 綿矢 りさ 河出書房新社 2003/08/26 ¥1,050
『インストール』で文藝賞を受賞した綿矢りさの受賞後第1作となる『蹴りたい背中』は、前作同様、思春期の女の子が日常の中で感受する「世界」への違和感を、主人公の内面に沿った一人称の視点で描き出した高校生小説である。
私が、影響を受けた本。
影響というよりは、衝撃に近かったかも…。
こんなに痛い本は、久しぶりかもしれない。
目をそむけたくなる様な胸中暴露。
主人公ハツや、にな川のインディビジュアリズム。
徹底されたたそれらの事細かな描写が、心に刺さってきた。
主人公ハツは、クラスにうまく溶け込めず、一人孤立している。
それを彼女は「人間の趣味がいい方だから」と言う。
これは私の心の中にもあるものだから、読んでいるのが辛かった。
他とは違う自分。
それを明らかに態度で示す彼女。
でも、胸中はさびしさで溢れているのかと思うと、それも痛かった。
妥協して友達を選ぶ「グループ」より、静かな「孤独」を選んだハツ。
同じ様に、家でも外でも「社会」を捨て、アイドルに異常に執着するにな川。
似ている様で少し違う。
その違いが、軽蔑であり、羨望であり、愛情であり、卑下する気持ちで表れ、
「背中を蹴る」という行為に繋がるのではないかと、読み終えた時に感じた。
人としてのプライドを守るハツと、その一線をも越えてしまうにな川。
同じ世界にいながらも、二人は両極端なのだと思う。
だからこそ、友情、そしてライバル意識が生まれてくるのかも知れない。
最初から最後まで、10代ならではの“孤独”が押し出されていた作品だと思う。
同年代だからこそ余計に、面白い、共感出来ると思えたのだろう。
綿矢りさの文章センス、言葉の使い方が、私は大好きだ。
『インストール』で文藝賞を受賞した綿矢りさの受賞後第1作となる『蹴りたい背中』は、前作同様、思春期の女の子が日常の中で感受する「世界」への違和感を、主人公の内面に沿った一人称の視点で描き出した高校生小説である。
私が、影響を受けた本。
影響というよりは、衝撃に近かったかも…。
こんなに痛い本は、久しぶりかもしれない。
目をそむけたくなる様な胸中暴露。
主人公ハツや、にな川のインディビジュアリズム。
徹底されたたそれらの事細かな描写が、心に刺さってきた。
主人公ハツは、クラスにうまく溶け込めず、一人孤立している。
それを彼女は「人間の趣味がいい方だから」と言う。
これは私の心の中にもあるものだから、読んでいるのが辛かった。
他とは違う自分。
それを明らかに態度で示す彼女。
でも、胸中はさびしさで溢れているのかと思うと、それも痛かった。
妥協して友達を選ぶ「グループ」より、静かな「孤独」を選んだハツ。
同じ様に、家でも外でも「社会」を捨て、アイドルに異常に執着するにな川。
似ている様で少し違う。
その違いが、軽蔑であり、羨望であり、愛情であり、卑下する気持ちで表れ、
「背中を蹴る」という行為に繋がるのではないかと、読み終えた時に感じた。
人としてのプライドを守るハツと、その一線をも越えてしまうにな川。
同じ世界にいながらも、二人は両極端なのだと思う。
だからこそ、友情、そしてライバル意識が生まれてくるのかも知れない。
最初から最後まで、10代ならではの“孤独”が押し出されていた作品だと思う。
同年代だからこそ余計に、面白い、共感出来ると思えたのだろう。
綿矢りさの文章センス、言葉の使い方が、私は大好きだ。
「蹴りたい背中」 冒頭
さびしさは鳴る。
耳が痛くなるほど澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸をしめつけるから、
せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く。細長く。
紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。
黒い実験用机の上にある紙屑の山に、また一つ、そうめんのように細長く千切った紙屑を載せた。
うずたかく積もった紙屑の山、
私の孤独な時間が凝縮された山。
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