─思い出すのが、辛くても。
白いソフトボックスの真ん中に赤い丸。
日本を思い起こさせる様な、真っ赤な丸。
彼の煙草。
初めから、終わりの見えてた恋だったのかも知れない。
お互いに相手がいる事も承知だった。
でも、お互いの存在も無視出来ない距離に居てしまった。
そんな二人の過ち。
彼は優しい人だった。
彼氏とうまくいかず、淋しかった心を埋めてくれた。
女心を擽る言葉の数々。
優しく私に触れる手。
少し八重歯の覗く笑顔。
強引めのキス。
全部全部、大好きだった。
彼女がいてもいいと思ってた。
傍にいてくれるならいいと思ってた。
「美晴は、俺のこと好き?」って
あたしの気持ちばかり聞く彼。
歪んだ愛をぶつけるあたしに、
笑って頭を撫でてくれたのも、彼。
毎晩「会いたい」と泣いていた。
自分だけを愛して欲しいと叫んでた。
そんな日々にはもう、終わりを告げよう。
心動かした彼に、責任はないのだから。
ちょっとだけ現実を知った。
自分を守る事も覚えた。
そして周りを傷つけない方法を、覚えた。
「ありがとう」
まだまだ大好きだけど、先へ進むよ。
白く曇る窓を開け、煙草を手に、
そんな事を想う美晴、2005年冬。
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