「俺の事どう思ってる?」
 
 
不意に懐かしい声が聞こえた気がした。
夏の風が気持ち良くて、浅い夢を見ていたのかも知れない。
不意に喉の渇きを覚えて、キッチンへと向かった。
 
 
氷入りのグラスを持って、ふと思い出す。
そういえば、あの日もこんな感じだったっけ。
あの日は真夏の癖に自棄に涼しくて、薄寒かった。
彼はあたしを後ろから抱き締めて、あの言葉を言った。
 
「俺の事どう思ってる?」
 
あたしは彼の一番じゃなくて、何とも答えられなかった。
「別に。あんた、彼女いるやん。」としか、言えなかった。
 
無言が続く。風の音が五月蝿い。
そして彼はあたしにキスを落とす。
気まずい空気を甘いものに変えてゆく。
 
 
あの時本当の気持ちを口にすれば、何かが変わっていただろうか。
何度も問いかけるけれど、答えは分からない。
一つだけ分かったのは、心と体は繋がってはいないという事。
 
皮肉にしか聞こえないだろうし、皮肉だと捉えてくれていい。
 
「ねぇ、素敵な思い出をありがとう。」

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