─もう戻れないから。
静寂を切り裂くエンジン音が
彼の到着を知らせる
ミッドナイトブルーのFXに跨り
夜を駆けてたあの頃
夜の風は気持ち良かった
遠く光るヘッドライトを眺めてた
時折振り向く彼の笑顔が
何より好きだった
「掴まっとけよ」と言う真剣な顔や
楽しそうに笑う声
路地裏で飲んだ赤い缶ジュースと
薄く明けてゆく空の色
そして二人の心臓の音
それらがあたしの全てだった
今日も窓の外で豪快なエンジン音
隣の家の女の子が急ぎ足で出掛けて行く
遠く去ってゆく彼等をあの頃の私達と重ねながら
あたしは今日も思い出を反芻する
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