+悦楽論+

2007年5月17日 読書
 
 
 
 
 
 
 
 
絡める指に恋が無くても
寄せた頬に愛が無くても
それはそれで充分
大切なのは此れからでしょう?

確信犯で絡めた手と手
首筋に疼く熱
甘い誘惑に堕ちて逝きたいのなら
貴方から仕掛けて

衝動を誤魔化しても
本能は見透かされる
それは恋の中毒
麻痺した思考回路で
どうぞ倫理をお唱えになって

今宵最高の悦楽を
騙し欺き愛してね
所詮遷ろう此の世の中
まやかしだって痛くないでしょう?
ISBN:412003612X 単行本 藤崎 麻里 中央公論新社 2005/02 ¥1,890

「溺れる人」を見た。
話は読売新聞で読んだことがあったので、ドラマ化を楽しみにしていた。
アルコール中毒の女性が、禁酒をするまでの凄まじい生活。
篠原涼子の中毒者の演技に、圧巻だった。

昔から、他人より少しお酒が強いなという事を実感していたと筆者は言う。
それが、あんな事態にまで発展する事は、思っても見なかったとも。
だんだん飲む量が増え、生活に欠かせないものになる。
飲まずには居られなくなり、家族に隠れてまで飲む様になる。
禁酒するにも、苛烈な禁断症状により、それを消そうとまた飲んでしまう。
断ったと思っていても、一滴身体に入るだけで再発するのがアルコール中毒らしい。

この話を読んで(見て)思ったのが「お酒は麻薬と一緒なんだ」という事。
今放映されている金八先生で、ドラッグの話が扱われているけれど、
しゅうの姿と、このアルコール中毒の女性の姿は全く同じ。
「あと少し…。これだけ飲んだら辞めるから…」
「いつだって辞められる。辞めたい時に辞めれば良い。」
悪循環を引き起こす事にも気付かずに、深みに嵌ってしまうのだ。

お酒も麻薬も、本当に怖い。
快楽の裏側には、闇も潜んでいる事に気付かなければいけない。
お酒は嗜む程度が丁度。
「酒は飲んでも呑まれるな」
昔の人は上手く言ったものだと思う。

“溺れる人”というタイトル。
彼女の姿をみてこの言葉が、本当にぴったりだと思った。

ホットロード

2005年2月6日 読書
 
  夜明けの 蒼い道
  赤い テイルランプ
  去ってゆく 細い うしろ姿
  もう一度
  あの頃の あの子たちに 逢いたい

 
最近になって、やっと読んだ漫画。
ずっと存在は気になっていたものの、手に取る事はなかった。
が、先日思い切って購入。
2時間で全て読みきってしまった。

読み終わった後、何だかすごく胸が詰まった。
あの世界観に、如何しようもない憧れと、気恥ずかしさを感じてしまう。
族に対しての憧れとか、不良に対しての気恥ずかしさとか、そういうのでは無い。
彼らを取り巻くあのキラキラとした世界に、私は強い憧憬の念を抱いてしまう。
14歳〜18歳の、リアルな少年少女の心情が描かれていて、とても切ない。

主人公和希が求めたもの、春山が追いかけたもの。
そして、思春期の子供達が憧れたもの。
それら全てが、この物語の中に詰まっていると思う。

18歳の今、この作品を読んで私が思うことは、
「全ての人が誰かの為に存在していて、かけがえの無い大切な存在なんだ」という事。
少しだけこの本から、優しさを貰った気がした。

ISBN:4088492358 単行本 紡木 たく 集英社 1986/12 ¥410
 

  
「走るぞ!せいいっぱいでいいから、走れ!」
 
 
 
 
「あたしだって、他のみんなが怖いわ」

        「試合だと思うことにしたんだ、俺は、これを」

  「ちょっとだけ、抱き締めてて。すぐ…終わるから」

           「来るな!」

     「あたしは奪われるよりは奪う側に回ろうと思っているだけよ」

            「味方のふりしてたやつが正体現してもおかしくないころだわ」

「あたし─あたしなんてことを─!」

         「おまえたちの、負けだ」

年末にwowowで録っていた映画を観て、久しぶりに読んでみた。
世間はこの作品を「不快」、「少年犯罪を助長する」等の言葉で括りがちだが、
私はそうは思わない。
この作品は“殺し合い”をテーマにしたものでは無いから。
当たり前だと思っていた“日常”が一瞬で壊れたら、どうする?
信じていた友達が、次会った時には敵になっていたら、どうする?

“有り触れた生活”がどんなに大事か、私達は把握出来なくて。
“日常の崩壊”は、私達にとっては余りに辛い事で。
それを再認識させてくれたのが、この作品。

信頼や、裏切りや、
中学三年生なりの不器用さや器用さ、
怖さや、痛み、憎しみや、愛情、
死と生と、勝ち負けと。
それら全てが、彼らの生きている証で。
全てがリアルで。
読んでいて泣きそうになる。

生きる事に必死で、
それでも大切なものは守りたくて。
極限の状態に置かれたからこそ、生まれるドラマもある。
そんな彼らの生き様、そして死に様を
真正面から書くこの作品は、凄いと思う。

人が小説に求めるもの。
それは“自分の状況とは違った世界”だと言う。
日常生活では、何も起こらなくて当たり前。
小説世界では、事件が起こって当たり前。
だから私はこの日常で、考えてみようと思う。

もし、この日常が崩壊したら?
もし、今自分が居るこの場所に居られなくなったら?

そういった想像をする事で、今まで見えていなかった大切なものを
再発見、再確認出来るのではないだろうか。
当たり前に自分の傍にあるモノ。
大切にしていきたいと思いますよね。
 
 
 
─世界はあらゆる形の啓示に充ちているのだ。
 
 
 
 
私の大好きな本の一つ。
初めてこの小説を読んだのが、高1だったと思います。
ユング心理学というものを知るキッカケとなったのが、村上春樹さんの小説だったので。

この小説は「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」という、二つの異なった世界を描いています。
私的には「世界の終り」は“静”。
「ハードボイルド・ワンダーランド」は“動”と感じました。
壁に囲まれた世界の静けさが、酷く私の心を打ったのを覚えています。
自分という殻を守り、感情をあまり出さない計算士の男。
影を捨て、自ら世界の終りに足を踏み入れた夢読みの男。
彼ら(彼)を追ううちに、自らの内面を探っている様な感覚になったのは、私だけでしょうか…?

影を捨てる事で、完璧な世界に存在する事が出来るかも知れない。
人間の自我は、新しい経験を取り入れるのを排除しようとする傾向を持つものだから。
けれど、何一つ自分で選択出来ない世界は、果たして素敵なのでしょうか?
私の消滅が誰をも悲しませないにせよ、誰の心にも空白をもたらせないにせよ、
あるいは殆ど誰にも気づかれないにせよ、それは私の問題なのだ。
たしかに私はあまりにも多くのものを失ってきた。
そしてこれ以上失うべきものは私自身のほかには
もう殆ど何も残ってはいないように思える。
しかし私の中には失われたものの残照がおりのように残っていて、
それが私をここまで生きながらえさせてきたのだ。

この科白に、この計算士の男の心の空洞を見た気がしました。
そしてそれが、この本の終りの静けさへと繋がっていくのだと思いました。
彼がこの世界から消滅してしまう時の彼の受け入れ様と、周りの人達へと送る祝福が、とても切なく心に響きました。

今日この本を読み返してみて思うのは、やっぱり私は村上春樹の文体が好きだという事。
あの何気ないシーンの描写の細かさと、思想がクリアな所が大好きです。
ISBN:4881312693 単行本 杉原 一昭 テレビ朝日 2003/11 ¥1,050

これは去年度版ですけれど…
つい先程まで、TVの前で参加してました。
テスト・ザ・ネイション。
今年もあると知って、ずっと楽しみにしてたんです!!
3時間TVにかじりつきで疲れました…。
今日は朝からバンドのスタジオ練習だし、すごく精神力を使っています。

今回のテストは結構良い出来でした。
私は記憶の分野に優れているらしいです。
人の顔や名前覚えるの、あんまり得意じゃないのにな…。
でも記憶分野は15問中14問正解で、自分でもビックリ。
言語:8/10問、論理:13/15問、数:8/10問、知覚:15/20問。
計:58/70問正解。
…結果、今年の私のIQは133でした。
回答欄の見間違いさえなければもっと高かったのに!!
と、憤慨しても仕方ありません。
私は小学生の頃から、ケアレスミスが多い女なので…。

かの金田一はIQ180との事。
どんな頭脳で、どれ程の情報処理能力を持っているんでしょう。
一瞬でいいから、入れ替わって考え事してみたいです。

蹴りたい背中

2004年10月16日 読書
ISBN:4309015700 単行本 綿矢 りさ 河出書房新社 2003/08/26 ¥1,050
『インストール』で文藝賞を受賞した綿矢りさの受賞後第1作となる『蹴りたい背中』は、前作同様、思春期の女の子が日常の中で感受する「世界」への違和感を、主人公の内面に沿った一人称の視点で描き出した高校生小説である。
 

私が、影響を受けた本。
影響というよりは、衝撃に近かったかも…。
こんなに痛い本は、久しぶりかもしれない。
目をそむけたくなる様な胸中暴露。
主人公ハツや、にな川のインディビジュアリズム。
徹底されたたそれらの事細かな描写が、心に刺さってきた。

主人公ハツは、クラスにうまく溶け込めず、一人孤立している。
それを彼女は「人間の趣味がいい方だから」と言う。
これは私の心の中にもあるものだから、読んでいるのが辛かった。
他とは違う自分。
それを明らかに態度で示す彼女。
でも、胸中はさびしさで溢れているのかと思うと、それも痛かった。

妥協して友達を選ぶ「グループ」より、静かな「孤独」を選んだハツ。
同じ様に、家でも外でも「社会」を捨て、アイドルに異常に執着するにな川。
似ている様で少し違う。
その違いが、軽蔑であり、羨望であり、愛情であり、卑下する気持ちで表れ、
「背中を蹴る」という行為に繋がるのではないかと、読み終えた時に感じた。
人としてのプライドを守るハツと、その一線をも越えてしまうにな川。
同じ世界にいながらも、二人は両極端なのだと思う。
だからこそ、友情、そしてライバル意識が生まれてくるのかも知れない。

最初から最後まで、10代ならではの“孤独”が押し出されていた作品だと思う。
同年代だからこそ余計に、面白い、共感出来ると思えたのだろう。
綿矢りさの文章センス、言葉の使い方が、私は大好きだ。

「蹴りたい背中」 冒頭
さびしさは鳴る。
耳が痛くなるほど澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸をしめつけるから、
せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く。細長く。
紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。

黒い実験用机の上にある紙屑の山に、また一つ、そうめんのように細長く千切った紙屑を載せた。
うずたかく積もった紙屑の山、
私の孤独な時間が凝縮された山。

空中ブランコ

2004年10月13日 読書
ISBN:4163228705 単行本 奥田 英朗 文藝春秋 2004/04/24 ¥1,300

直木賞受賞作という事で、友達に借りて読みました。
学校帰りの電車の中で、噴出しそうになりましたよ…。
とにかく、掟破りな精神科医と、面白おかしく、でも真面目に悩んでいる患者のお話。
この精神科医の雰囲気は、この本のある一節に凝縮されていると私は感じました。

(P,133)
伊良部といい看護婦といい、この診察室は観覧車だ。
乗ったら一周する間、そのペースに合わせるしかない。


本当にこの通り。患者は皆、精神科医伊良部のペースに嵌っていくのです。
その患者さん達の悩みを、天然なのか計算なのか、軽々と解決(?)していく。
その過程が面白いのです。
2時間程で読み終えてしまいました!!
今悩みを持っている方にお勧めです。
変に深く考え込んでしまう前に、この本を読んで、伊良部式解決法を見つけましょう(笑)!!

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